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  • 【事例検討】Bit Torrentユーザーの責任に関する裁判例

    【事例検討】Bit Torrentユーザーの責任に関する裁判例

    Bit Torrentユーザーの責任に関する裁判例(東京地裁令和3年8月27日判決、裁判所ウェブサイト)について、私の頭の整理のため、争点に関する判決の要点を抜粋しました。

    一読した感想としては、責任論としては、Bit Torrentの技術的仕組みを踏まえながら共同不法行為成立の要件を細やかに検討しており、損害論としては、本件における特殊性に考慮した妥当なものと感じます(ユーザーがBitTorrentの仕組みを当然認識・理解して利用したものと認めるのが相当である、との判示部分はどうかなと思いますが…。)。
    現在、知財高裁で審理がなされているようであり、結論が変わる可能性もありますが、ご参考までに。

     

     

    1 争点1-1(著作権侵害)争点1-2(共同不法行為性)について
    「BitTorrentは,特定のファイルをピースに細分化し,これをBitTorrentネットワーク上のユーザー間で相互に共有及び授受することを通じ,分割された全てのファイル(ピース)をダウンロードし,完全なファイルに復元して,当該ファイルを取得することを可能にする仕組みであるということができる。これを本件に即していうと,原告X1らが個々の送受信によりダウンロードし又はアップロード可能な状態に置いたのは本件著作物の動画ファイルの一部(ピース)であったとしても,BitTorrentに参加する他のユーザーからその余のピースをダウンロードすることにより完全なファイルを取得し,また,自己がアップロード可能な状態に置いた動画ファイルの一部(ピース)と,他のユーザーがアップロード可能な状態に置いたその余のピースとが相まって,原告X1ら以外のユーザーが完全なファイルをダウンロードすることにより取得することを可能にしたものということができる。そして,原告X1らは,BitTorrentを利用するに際し,その仕組みを当然認識・理解して,これを利用したものと認めるのが相当である。
    以上によれば,原告X1らは,BitTorrentの本質的な特徴,すなわち動画ファイルを分割したピースをユーザー間で共有し,これをインターネットを通じて相互にアップロード可能な状態に置くことにより,ネットワークを通じて一体的かつ継続的に完全なファイルを取得することが可能になることを十分に理解した上で,これを利用し,他のユーザーと共同して,本件著作物の完全なファイルを送信可能化したと評価することができる。
    したがって,原告X1らは,いずれも,他のユーザーとの共同不法行為により,本件著作物に係る被告の送信可能化権を侵害したものと認められる。」

    2 争点2-1(共同不法行為に基づく損害の範囲)について
    (アップロードの始期および終期)
    原告X1らがBitTorrentを通じて自ら本件各ファイルを他のユーザーに送信することができる間に限り,不法行為が継続していると解すべきであり,その間に行われた本件各ファイルのダウンロードにより生じた損害については,原告X1らの送信可能化権侵害と相当因果関係のある損害に当たるというべきである。他方,端末の記録媒体から本件各ファイルを削除するなどして,BitTorrentを通じて本件各ファイルの送受信ができなくなった場合には,原告X1らがそれ以降に行われた本件各ファイルのダウンロード行為について責任を負うことはないというべきである。」
    「原告X1らは,それぞれ,別紙「損害額一覧表」の「終期」欄記載の各年月日に原告ら代理人に相談をしたことが認められるところ,同原告らは既にプロバイダ各社からの意見照会を受け,著作権者から損害賠償請求を受ける可能性があることを認識していた上,上記相談の際に,原告ら代理人からBitTorrentの利用を直ちに停止すべき旨の助言を受けたものと推認することができるから,同原告らは,それぞれ,遅くとも同日にはBitTorrentの利用を停止し,もって,本件各ファイルにつきアップロード可能な状態を終了したものと認めるのが相当である。」

    (ダウンロード数)
    「本件全証拠によっても,上記各期間中に本件各ファイルがダウンロードされた正確な回数は明らかではない。他方で,証拠(略)によれば,令和元年10月1日から令和3年5月18日までの595日間において,本件ファイル1については501,本件ファイル2については232,本件ファイル3については910,それぞれダウンロード数が増加していることが認められるところ,各原告につき,同期間の本件各ファイルのダウンロード数の増加率に,前記・・・において認定したダウンロードの始期から終期までの日数(別紙「損害額一覧表」の「日数」欄記載のとおり)を乗じる方法によりダウンロード数を算定するのが相当である。」

    (基礎とすべき販売価格)
    「原告X1らが本件各ファイルをBitTorrentにアップロード可能な状態に置いたことにより,BitTorrentのユーザーにおいて,本件著作物を購入することなく,無料でダウンロードすることが可能となったことが認められる。これにより,被告は,本件各ファイルが1回ダウンロードされるごとに,本件著作物を1回ダウンロード・ストリーミング販売する機会を失ったということができるから,本件著作物ダウンロード及びストリーミング形式の販売価格(通常版980円,HD版1270円)を基礎に損害を算定するのが相当である。」
    「そして,被告は,DMMのウェブサイトにおいて本件著作物のダウンロード・ストリーミング販売を行っているところ,被告の売上げは上記の販売価格の38%であると認められるので(弁論の全趣旨),本件各ファイルが1回
    ダウンロードされる都度,被告は,通常版につき372円(=980×0.38),HD版につき482円(=1270×0.38)の損害を被ったものということができる。」

    3 争点2-2(減免責の可否)について
    「原告らは,原告らにおいて複製物を作成しようという意思が希薄であり,客観的にも本件著作物の流通に軽微な寄与をしたにすぎないことや,原告らとユーザーとの間の主観的・経済的な結び付きが存在しないことからすれば,関連共同性は微弱であるとして,損害額につき大幅な減免責が認められるべきである旨主張するが,原告らの指摘するような事情をもって,前記認定の損害額を減免責すべき事情に当たるということはできない。」

  • 【相続・遺言】相続放棄の注意点

    【相続・遺言】相続放棄の注意点

     最近、相続放棄をしたいけれども、やってはいけないことは何か、というご相談がよくあります。
     たとえば、遠くに住む親戚が亡くなって相続人となったが、債務があるか分からないので相続放棄をしたい、ただ、故人が残した物の後片付けはしたい、といったご相談です。

     

    相続放棄の方法

     法定相続人が、裁判所に、相続放棄の申述書を提出する方法で行います。
     提出先の裁判所は、被相続人(亡くなった方)の最後の住所地の家庭裁判所となります。
     郵送でも提出可能です。
     必要書類等については以下のページをご参照ください。
     裁判所ホームページ

     注意点としては期間制限があることです。
     法律上、自己のために相続があったことを知った時から3カ月以内に申述しなければいけません。
     「亡くなった時から3カ月」ではありませんので、被相続人が亡くなって長年経っていたとしても相続放棄ができることがあります。提出資料は多いですが、まずは期限内に申述書を提出することが重要です。後から資料を追完することも可能です。

     遺産の調査に時間を要することもあるでしょう。
    相続放棄をするかどうか迷っている場合、裁判所に予め届け出ることによって届出期間を延長してもらうことができます。私の経験では期間の延長は比較的容易に認められる印象です。


    相続放棄の効果

     相続放棄を行った場合、その方は初めから相続人ではなかった扱いとなります。被相続人の債務を負担することはないですが、反面、プラスの財産を受け継ぐこともできません。被相続人の債権者から債務の支払いを請求されたとしても、相続放棄していれば、支払う義務はありません。

     なお、相続放棄の申述をした場合、受理した家庭裁判所は簡単な審理のみを行い、基本的には相続放棄を一応有効なものとして受理します。相続放棄の有効性を争いたい場合(たとえば、被相続人の債権者が、相続放棄が無効であると主張したい場合)、別途民事訴訟を起こすなどして、その中で相続放棄が有効か無効かが争われることになります。

    相続放棄にあたって注意すべきこと

     ここで相続放棄をするにあたって、注意すべき点があります。
    民法上、法定単純承認というものが定められており(民法921条)、これに該当してしまうと相続放棄が認められない可能性があります。
     法定単純承認にあたるものとしては
    ① 相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき。
    ② 相続人が相続放棄をした場合であっても、相続財産の全部もしくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、または悪意で相続財産の目録中に記載しなかったとき。
    などが挙げられます。

     せっかく相続放棄の手続きを行ったのに、後に相続放棄が無効となってしまっては大変です。
     亡くなった方が残した物の処分にあたって判断に迷うこともあるかと思います。相続放棄を検討されている方は一度弁護士にご相談されることをお勧めします。

    参考として裁判例で問題となったものを以下列挙しておきます。
    (相続財産の「処分」として,法定単純承認にあたるとされたもの)
    ・ 相続債権を取り立てて収受領得すること(最一小判昭和37年6月21日)
    ・ 遺産分割協議をすること(大阪高決平成10年2月9日)
    ・ 他の共同相続人が相続財産を取得することを受容して事実上の相続放棄をすること(大阪高決平成10年2月9日)
    ・ 相続債務について相続財産による代物弁済を行なうこと(大判昭和12年1月30日)

    (法定単純承認にあたらないとされたもの)
    ・ 相続財産を用いて,仏壇,墓石を購入したこと(大阪高決平成14年7月3日)
    ・ 相続財産を用いて,葬儀費用を捻出したこと(東京控判昭和11年9月21日)
    ・ 相続人固有の財産で,相続債務を弁済すること(福岡高宮崎支決平成10年12月22日)

  • 【雑感】弁護士の正しい選び方2(弁護士費用編)

    【雑感】弁護士の正しい選び方2(弁護士費用編)

    ★まずはこちらをお読みください!
    【雑感】弁護士の正しい選び方(立志編)

     

    弁護士費用にこだわりすぎない


      現在、弁護士の報酬は自由化されており、事務所ごとに弁護士費用は大きく違います。決して安くはない弁護士費用、少しでも負担が軽い方が良いですよね。
    しかし、弁護士費用の高い、安いを、最終的な弁護士選びの決め手にするのはおすすめしません。弁護士選びの要素としてもっと大切なことがあるからです(後に述べます。)。
    弁護士費用が他よりも明らかに高い、または明らかに安い事務所は避けた方がよいと思いますが、単に安いからという理由で選ぶのは止めた方が良いと思います。
    明らかに高い事務所を避けるべきなのはいうまでもありませんが、明らかに安い事務所を選ぶのも慎重にされた方が良いでしょう。事務所経営という側面で考えれば、弁護士費用が明らかに安い事務所の場合、必然的に大量の案件を受けなければなりません。そうすると、弁護士が一件ごとにかけられる労力が限られるため、質の低下につながります。
    弁護士費用の目安については、いろんな事務所のホームページを見比べてみたり、日弁連のホームページをご参照する等してみてください。
     日本弁護士連合会ホームページ 

     弁護士費用の工面の仕方ですが、ご加入の保険などで弁護士費用特約が付いており、思いがけず保険が使えることがあります。一度、保険証書を確認してみましょう。
    また最近では、トラブル発生後でも契約できる弁護士費用提供サービスというものもあります。「アテラ」ホームページ
    ご自身の所得が一定の要件を満たす場合は法テラスの利用も可能です。法テラスの場合、弁護士費用を立て替えて貰い、後に分割で支払っていくことになります。
    「法テラス」ホームページ

     弁護士は、受任にあたって弁護士費用をきちんと説明する義務があります。不明な点があれば、見積書を依頼するのも良いでしょう。見積書の発行は、弁護士の努力義務とされていますので発行する義務はないのですが、きちんとした事務所であれば頼めば応じてくれるはずです。見積書を発行してくれるかどうかも、その事務所が誠実かを見極める一つの指標です。

     なお、弁護士費用の分割払いや値下げは可能か、という点ですが、これも事務所によって異なります。
    全国展開しているような大手の事務所では、かなりガチガチに弁護士費用を一律に定めており、依頼者の事情に応じて値下げをしたりすることはおそらくないものと思います。

     弁護士費用って高いな、と思われるかもしれません(金額だけみればやはり高いです。)。ただ、依頼者の方と打ち合わせを重ねたり、相手と交渉を続けたり、裁判所に何度何度も足を運んだりしているうち、依頼者の方に、「弁護士の仕事って大変ですね。」、「弁護士費用では割りに合わないかもしれませんね。」と言われることはよくあります。高いと思われがちな弁護士費用ですが、弁護士業務の中には時間や労力をとても要する場合もあり、それを踏まえての金額でもあることを少しでも知っていただけると幸いです。 

  • 【雑感】弁護士の正しい選び方1(立志編)

    【雑感】弁護士の正しい選び方1(立志編)

     最近、今頼んでいる弁護士への委任を辞め、当事務所にて受任して欲しいという依頼が立て続けにありました。
     委任している弁護士を途中で変更することは、依頼者にとって、また弁護士にとっても不幸なことです。
     この機会に、「弁護士の正しい選び方」って何だろう、ということを私なりに考え、以下まとめることにしてみました(当事務所の宣伝にはならず、むしろ逆効果かもしれませんが、弁護士選びのご参考にしてみてください。)。

     

    弁護士とのファーストコンタクト

     最近は、ホームページを設ける事務所がとても増えました。いろんな事務所のホームページを見比べて、訪問する事務所を選ぶ方も多いでしょう。
     また、弁護士ドットコムココナラ法律相談といった弁護士紹介サイトもあります。いろんな弁護士を簡単に比較できるのが面白いですね。
     なお、昔からの名門事務所の中にはあえてホームページを持たないところもあります(顧問先が多数あって、ホームページを作る必要がないからです。羨ましい限りです。)。

     ちょっと前までは、タウンページで調べて、という方もちらほらいらっしゃいました。今では皆無です。私もタウンページ広告はやめてしまいました。

     弁護士会の法律相談や、自治体の法律相談にて弁護士に相談するという手もあります。弁護士会の法律相談は、相談内容によって無料だったり有料だったりします。各自治体の法律相談は、だいたいどこもやっているはずです。無料ですが1年に1回など相談回数に制限があります。弁護士が当番制で担当するため、誰が来るのか分かりませんし、弁護士を指名することはできません。わざわざ法律事務所に行くほどではないがちょっと弁護士に聞いてみたい、という方にはお薦めです(詳細はお住まいの市役所、町役場まで。)。

     そして、「紹介」、「口コミ」という形での当事務所に来所いただく方も多くいらっしゃいます。どなたかの紹介でなければ受任しない、という事務所も昔はそれなりにあったようですが、そのような事務所は今はあまりないようです。

     

    事務所の規模で選ぶ?

     さて、弁護士の選び方として「弁護士数の多い大きな事務所」から選ぶというのは正しいでしょうか?

     大きな事務所の方が何となく信用できる、これは私も心情として、とてもよく分かります。

     大きな事務所を選ぶメリットとしては、弁護士が複数いるため、自分に合った弁護士に出会える可能性が高まることが挙げられるでしょう。また、得意分野が異なる弁護士が在籍していれば、ご自身の案件に詳しい弁護士に巡り会える可能性もあります。
     もっとも、これは在籍する弁護士の中から、依頼者が担当弁護士を自由に選べることが前提です。事務所によって異なるのでしょうが、担当弁護士は事務所側で決める、ということも多いです。そうすると、依頼者が弁護士を全く選べないということになってしまいます。ありがちなのが、ベテランのボス弁護士に頼んだつもりだったのに、若手弁護士しか対応してくれない、というご不満。新人弁護士が最初にぶつかる壁の一つに「あなたに頼んだんじゃないのに。」という依頼者の冷たい視線というものがあります。

     また、弁護士の出入りが激しい事務所の場合、担当弁護士が途中で代わってしまう、ということもあり得ます。

     事件の相手方が大きな事務所の場合、10人以上の弁護士が連名で押印を揃え、文書を送ってくることがあります。弁護士あるあるなのですが、「相手は10人以上も弁護士が就いているのですか。」とこちらの依頼者が心配になることがあります。実際のところは、相手側で担当している弁護士は1人かせいぜい2人です。その他の弁護士は名前を連ねているだけです。

     一口に大きな事務所といっても、いろいろな事務所があります。組織力を感じる事務所や弁護士の寄せ集まりと思われる事務所、経営者弁護士が労働力として多くの若手を雇っている事務所、さまざまです。最近よく見られるのが、若手の弁護士数人で立ち上げた事務所。これは経費負担を軽くすることが狙いでしょう(弁護士が激増した今の時代、一人で独立することはリスクも大きいのです。)。事務所の中には多忙な業務の合間を縫って、定期的に勉強会を開き、弁護士同士で切磋琢磨しているところもあります。このような事務所は素晴らしいと思いますし、所属弁護士のスキルが期待できます。大きな事務所の中で訪問先を選ぶのであれば、ベテラン、中堅、若手がバランス良く所属しているところをお薦めしたいと思います。その事務所は長く継続して成長していると考えられるからです。

     当事務所のような小さな事務所のメリット、デメリットはその反対です。メリットとしては「自分の頼みたい弁護士に確実に頼める」、「弁護士との距離が近い」といったところでしょうか。大きな事務所でたまに聞く、「弁護士と連絡がとれない」、「事務員としか話せない」といったことも少ないはずです。デメリットとしては、弁護士の選択肢が限られることでしょうが、いろんな事務所がホームページを構え、事務所を訪れる前の段階で、弁護士の比較、選択ができてしまう今の時代では、あまり関係のないことかもしれません。あと、事務所単位で弁護団を組むような大規模事件には対応ができません。

     事務所の大小を問わず、確実に言えることは、同じ事務所に在籍する弁護士であっても、弁護士によって仕事の進め方や力量が大きく異なるということです(本当に大きく違います。)。

     「どの事務所を選ぶか」ではなく「どの弁護士に依頼するか」。これは弁護士選びにおいて
    重要な視点です。

     

    経験年数・年齢で選ぶ?
     
     とあるデータによれば、弁護士選びの際、弁護士の経験年数を重視するという方が、最も多かったということです。これは正しい選び方でしょうか。

     さすがに、登録したての弁護士と、キャリア30年、40年のベテラン弁護士とでは腕の違いがあるでしょう。やはり、多少の経験年数を得て、いろいろな経験を積んだ弁護士に頼んだ方が良い、と一般論としては言えます。

     しかし、経験年数が長ければ長いほどよい、という考えには私は否定的です。若くて知識も少なく、経験の浅い弁護士が、真剣にその案件に取り組み、必死になって法律の調査をしたり、裁判所に提出する書面を懸命に書いたりして、素晴らしい結果を出した、今までなかったような新しい判決を勝ち取った、ということはよくあることです(自分にもそのような経験があります。)。これが弁護士という仕事の醍醐味の一つでもあります。

     弁護士が経験を重ねていくと、良くも悪くも「事件の結末が見えてしまう」ということがあります。相談の中で、「別の弁護士にこんなの無理だよ、と冷たく言われた。」、というお話をよく聞きます。弁護士が、プロとして先を見据えた厳しめの見通しを伝えたときに、相談者の側が不満を持ってしまうことがままあるのです。これは弁護士誰もが抱えている、悩ましい問題です。また弁護士が経験を積むと、事件の見通しができるようになる反面、チャレンジを避けてしまう、という傾向が生まれる可能性はあります。

     私の持論は、「経験年数が少なくても、できるヤツはできる。経験年数が多くても、できるとは限らない。」です(当たり前かもしれませんが)。

     なお、経験年数ではなく、弁護士の「年齢」については、ご自身の好みで良いかと思います。自分と年の近い弁護士の方が話しやすい、という方もいれば、年配の弁護士の方が頼れる、という方もいるでしょう。

     

    専門性や実績で選ぶ?

     よくいただくご質問の中に、「専門は何ですか?」というものがあります。私は「専門ではないのですが、交通事故や中小企業に関わる件は経験も多いですし、得意だと思います。」とお答えしています。これは弁護士の広告は、「〇〇専門」と謳ってはならない、という規制があるからです。何を基準に専門と認めるか客観性が担保できないというのがその理由です。一方で、「得意」というのは主観にすぎないのでOKとのこと。分かるような、よく分からないような規制です。

     ご自身の案件について、その分野に明るい弁護士を選ぶことはとても大切なことです。
     その分野に詳しいかどうかは、まずは弁護士のホームページや弁護士紹介サイトが貴重な情報源となるでしょう。
     ここで一つ、注意が必要です。よく「〇〇の分野で経験豊富!」という記載がありますが、経験の豊富さを裏付ける情報がきちんと書かれているか確認してみましょう。具体的にどんな案件を扱ったのか、何件ほど扱ったのか、その分野の論文を書いたり講演をしたりしているか、研究会や勉強会などに所属しているか、といった情報などです。そもそも、その分野を何年または何件扱えば、「経験豊富」といえるのでしょう。実際のところ、自由に名乗れてしまうのです。例えば、判例雑誌に載るような判決を勝ち取ったことや、論文の執筆といった実績は、ごまかしが効かないため、その分野に精通しているかどうかを見極める上で、重要な情報の一つといえるでしょう

     最近、弁護士業界では、取扱分野ごとの専門サイト(サテライトサイト)を設けることが流行っています。例えば、「弁護士〇○の離婚専用ページ」、「○○法律事務所の相続専用サイト」といったものです。こういったサイトは、その分野の手続や内容が、非常に細かく説明されているのが特徴です。その分野の知識を得たいという方には有益なサイトではありますが、実際その弁護士がその分野に詳しいかどうかは、また別の問題として考えておかなければなりません。
     というのも、こういった専門サイトの制作が、コンサルやホームページ制作業者のビジネスの対象として活発になっており、その内容も過剰な期待を抱かせるものになっていることも多いからです。弁護士の専門サイトをいろいろ見比べると、似たような内容のものを見つけることがあります(同じ業者で作ったものなのでしょう。)。もちろん、オリジナリティのある魅力的な専門サイトを持っている弁護士も数多くいます。きちんと弁護士が自分で原稿を作ったと分かる内容であれば信用できるサイトですし、その弁護士もきっと信用できることでしょう。

     弁護士が経験できる事件数には限りがあります。長年弁護士を続けていても、それほど経験しない分野もあります。これも、それも、あれも「経験豊富」と謳う弁護士もいますが、さすがにそれは過大広告であるといわざるを得ません。
     本当に「経験豊富」か、その分野に詳しいかは、その弁護士の実績が確実に分かる情報(先ほどの判決の獲得や論文の執筆など)を手がかりにされると良いと思います

     

     さて、ここで「弁護士の正しい選び方」の結論を述べたいと思ったのですが、ここまで思いのほか筆が進んでしまいました。続きはまたの機会にしたいと思います。

  • 【法律相談】トレント(Bit Torrent)を使用された方へ

    【法律相談】トレント(Bit Torrent)を使用された方へ

    最近、当事務所でファイル交換ソフト「トレント(Bit Torrent)」を使用された方のご相談を多くいただいています。ご加入のプロバイダから「発信者情報に開示に関する意見照会書」が届いたがどうしたらよいか、というものです。

    まず、プロバイダから意見照会書が届いたら、必ず何らかの回答をするようにしましょう(拒否または同意)。というのも、回答を無視した場合、一定期間(2週間)を経過すると、プロバイダがあなたの発信者情報を開示してしまう可能性があるからです。中には大量の照会書が届いている方もいらっしゃいますが、無視はせず、回答することが大事です。

    ご相談者の中には、ご自身がトレントを使用した覚えがないという方もいらっしゃいますが、拒否する場合には、理由を具体的に記載する必要があります(「著作権法の許容範囲である」など)。

    いずれにせよ、プロバイダに対して発信者情報の開示請求が行われている以上、権利侵害を主張する相手方が、あなたに対する損害賠償請求などを考えている可能性が否定できません。そのため、プロバイダからの意見照会書についても、その後の手続きを考慮の上、慎重に回答する必要があります。

    プロバイダからの意見照会書が届いてお困りの方は、一度当事務所までご相談ください。

    お問い合わせ、相談予約

       

    • 【交通事故】最新版の青本に掲載されました!

      【交通事故】最新版の青本に掲載されました!

      昨日、最新版の「青本」が届きました。
      「青本」とは、交通事故を扱う弁護士必携のバイブル。
      いわゆる交通事故の弁護士基準、というのが書かれている本です。

      そういえば、弁護士が使う交通事故の本って、青本の他に、赤本、黄本というのもあります。
      あえて、赤、青、黄にしているのでしょうか?

      この「青本」、実務的に価値のある裁判例が多数掲載されています。
      新版が出るたび、まず私が確認するのは「自分の案件、掲載されてるかな?」ということ。

      ざっと目を通したところ、とりあえず2件発見。
      (興味のある方は 当サイトの交通事故のページをご覧ください。)
      この2件は、確か旧版にも掲載されていたはず。他にも掲載されている案件があれば、またご報告したいと思います。

    • 新ホームページ完成

      新ホームページ完成

      新ホームページの運用を開始しました。
      このホームページでは,新着情報やブログなど,鮮度の高い情報を随時お届けしていきます。
      従来のホームページと併せてよろしくお願いいたします。

       

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