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【事例検討】Bit Torrentユーザーの責任に関する裁判例

houritusoudan

Bit Torrentユーザーの責任に関する裁判例(東京地裁令和3年8月27日判決、裁判所ウェブサイト)について、私の頭の整理のため、争点に関する判決の要点を抜粋しました。

一読した感想としては、責任論としては、Bit Torrentの技術的仕組みを踏まえながら共同不法行為成立の要件を細やかに検討しており、損害論としては、本件における特殊性に考慮した妥当なものと感じます(ユーザーがBitTorrentの仕組みを当然認識・理解して利用したものと認めるのが相当である、との判示部分はどうかなと思いますが…。)。
現在、知財高裁で審理がなされているようであり、結論が変わる可能性もありますが、ご参考までに。

 

 

1 争点1-1(著作権侵害)争点1-2(共同不法行為性)について
「BitTorrentは,特定のファイルをピースに細分化し,これをBitTorrentネットワーク上のユーザー間で相互に共有及び授受することを通じ,分割された全てのファイル(ピース)をダウンロードし,完全なファイルに復元して,当該ファイルを取得することを可能にする仕組みであるということができる。これを本件に即していうと,原告X1らが個々の送受信によりダウンロードし又はアップロード可能な状態に置いたのは本件著作物の動画ファイルの一部(ピース)であったとしても,BitTorrentに参加する他のユーザーからその余のピースをダウンロードすることにより完全なファイルを取得し,また,自己がアップロード可能な状態に置いた動画ファイルの一部(ピース)と,他のユーザーがアップロード可能な状態に置いたその余のピースとが相まって,原告X1ら以外のユーザーが完全なファイルをダウンロードすることにより取得することを可能にしたものということができる。そして,原告X1らは,BitTorrentを利用するに際し,その仕組みを当然認識・理解して,これを利用したものと認めるのが相当である。
以上によれば,原告X1らは,BitTorrentの本質的な特徴,すなわち動画ファイルを分割したピースをユーザー間で共有し,これをインターネットを通じて相互にアップロード可能な状態に置くことにより,ネットワークを通じて一体的かつ継続的に完全なファイルを取得することが可能になることを十分に理解した上で,これを利用し,他のユーザーと共同して,本件著作物の完全なファイルを送信可能化したと評価することができる。
したがって,原告X1らは,いずれも,他のユーザーとの共同不法行為により,本件著作物に係る被告の送信可能化権を侵害したものと認められる。」

2 争点2-1(共同不法行為に基づく損害の範囲)について
(アップロードの始期および終期)
原告X1らがBitTorrentを通じて自ら本件各ファイルを他のユーザーに送信することができる間に限り,不法行為が継続していると解すべきであり,その間に行われた本件各ファイルのダウンロードにより生じた損害については,原告X1らの送信可能化権侵害と相当因果関係のある損害に当たるというべきである。他方,端末の記録媒体から本件各ファイルを削除するなどして,BitTorrentを通じて本件各ファイルの送受信ができなくなった場合には,原告X1らがそれ以降に行われた本件各ファイルのダウンロード行為について責任を負うことはないというべきである。」
「原告X1らは,それぞれ,別紙「損害額一覧表」の「終期」欄記載の各年月日に原告ら代理人に相談をしたことが認められるところ,同原告らは既にプロバイダ各社からの意見照会を受け,著作権者から損害賠償請求を受ける可能性があることを認識していた上,上記相談の際に,原告ら代理人からBitTorrentの利用を直ちに停止すべき旨の助言を受けたものと推認することができるから,同原告らは,それぞれ,遅くとも同日にはBitTorrentの利用を停止し,もって,本件各ファイルにつきアップロード可能な状態を終了したものと認めるのが相当である。」

(ダウンロード数)
「本件全証拠によっても,上記各期間中に本件各ファイルがダウンロードされた正確な回数は明らかではない。他方で,証拠(略)によれば,令和元年10月1日から令和3年5月18日までの595日間において,本件ファイル1については501,本件ファイル2については232,本件ファイル3については910,それぞれダウンロード数が増加していることが認められるところ,各原告につき,同期間の本件各ファイルのダウンロード数の増加率に,前記・・・において認定したダウンロードの始期から終期までの日数(別紙「損害額一覧表」の「日数」欄記載のとおり)を乗じる方法によりダウンロード数を算定するのが相当である。」

(基礎とすべき販売価格)
「原告X1らが本件各ファイルをBitTorrentにアップロード可能な状態に置いたことにより,BitTorrentのユーザーにおいて,本件著作物を購入することなく,無料でダウンロードすることが可能となったことが認められる。これにより,被告は,本件各ファイルが1回ダウンロードされるごとに,本件著作物を1回ダウンロード・ストリーミング販売する機会を失ったということができるから,本件著作物ダウンロード及びストリーミング形式の販売価格(通常版980円,HD版1270円)を基礎に損害を算定するのが相当である。」
「そして,被告は,DMMのウェブサイトにおいて本件著作物のダウンロード・ストリーミング販売を行っているところ,被告の売上げは上記の販売価格の38%であると認められるので(弁論の全趣旨),本件各ファイルが1回
ダウンロードされる都度,被告は,通常版につき372円(=980×0.38),HD版につき482円(=1270×0.38)の損害を被ったものということができる。」

3 争点2-2(減免責の可否)について
「原告らは,原告らにおいて複製物を作成しようという意思が希薄であり,客観的にも本件著作物の流通に軽微な寄与をしたにすぎないことや,原告らとユーザーとの間の主観的・経済的な結び付きが存在しないことからすれば,関連共同性は微弱であるとして,損害額につき大幅な減免責が認められるべきである旨主張するが,原告らの指摘するような事情をもって,前記認定の損害額を減免責すべき事情に当たるということはできない。」

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